はじめに
2017年10月7日から10月9日の2泊3日の日程で山喜旅館 (静岡県伊東市) にて第50回情報科学若手の会を開催いたしました。 全国より招待講演者と若手特別講演者を含む46名が参加し、様々な分野の発表を行い、活発な議論が行われました。
発表および議論
以下のような発表枠を用意し、議論を行いました。 本年は、通常発表4件、ショート発表9件の発表がありました。
- 招待講演:60分 (質疑含む)
- 一般発表:発表30分+質疑10分
- ショート発表: 発表15分+質疑10分
10月7日
ショート発表 1: 「ブロックチェーンの概要ご紹介」 電気通信大学 情報学専攻 (1年) 中西 建登
近年FinTechなどの単語を中心として話題となっている「ブロックチェーン」をベースとして、どのような手法で安全性を守っているか、どのような点において弱点があり、また関連キーワードも交えて、これらの話題が出た際についていけるようになる程度の概要をご紹介します。 また、ブロックチェーンを用いている中で最も広く使われている「Bitcoin」にも触れ、その高速化を提案した私の卒業論文についてもご紹介させていただきます。
一般発表 1: 「ライトニングネットワークが描くビットコインの未来」 グーグル合同会社 大久保 徹以
昨今の送金手数料の高騰と分裂騒動により、ビットコインはスケーラビリティ上の問題を抱えているということが広く認識されるようになってきました。また、ビットコインの有力な用途として小額決済が考えられますが、1送金あたり数百円といった手数料を必要とする現在のビットコインを小額決済用途で直接用いることは困難です。これらの解決策としていくつかの手法が提案されていますが、その中でもライトニングネットワークと呼ばれる技術がいくつかの点から注目されています。ライトニングネットワークを用いることで、信頼できる第三者を必要とせずに、ビットコインネットワーク上で数銭といった単位での決済が可能となります。本発表では、ビットコインの基本的な仕組みとライトニングネットワークの実現方法について解説するとともに、今後ビットコインがどのように発展していくかを考えていきます。
ショート発表 2: 「スマートコントラクトによる機械学習モデル同士の判断合意」 京都大学理学部3回生 昼間 輝一
特徴量空間を共有しない機械学習モデル同士の合意の方法について。 単一では信頼性の低い機械学習モデルが複数で競合・合意することによって、精度が上がり、信頼性を担保できるシステムについて考えた。計算資源がかなり限られている状況を前提とし(特にEthereum上のスマートコントラクトで実行できること)、合意・推論の計算におけるコストパフォーマンスを下げることを中心に設計を行った。これに、合意を行うインセンティブとなる報酬を決めるエコシステムを加えた提案である。
10月8日
ショート発表 3: 「AIを支えるストレージ基盤技術」 株式会社富士通研究所コンピュータシステム研究所 大辻 弘貴
AIを活用するにあたり、学習のための大量のデータをスムーズに蓄積・供給する仕組みが求められています。 本発表では、高速並列ファイルシステムを用いて、AI向けに最適化したデータ供給を行う手法をご紹介します。
ショート発表 4: 非公開
非公開を希望される発表がございました。
ショート発表 5: 非公開
非公開を希望される発表がございました。
ショート発表 6: 非公開
非公開を希望される発表がございました。
招待講演: 「“AI記者” 誕生とその裏側テクノロジー・メディアへの挑戦」 株式会社日本経済新聞社 吉村大希
近年の人工知能ブームは新聞社を含む国内外のメディア業界にも影響を与えています。上場企業が発表する決算データの要点を自動で配信する「決算サマリー」というサービスが生まれた経緯や開発の裏側、リリース後社内外の反響などをご紹介します。また、メディアとして記事を主とする資産と人工知能の利点を活用したビジネスや報道現場への応用可能性についてディスカッションできればと思います。
一般発表 2: 「情報科学若手の会の50年」 情報若手の会幹事 小谷 大祐, 岩成 達哉, 黒崎 優太, 高橋 真奈茄
情報科学若手の会は今年で50年、50回目を迎えました。その間、様々な方が情報科学若手の会に参加し、議論し、巣立って行かれました。本発表では、毎年の情報科学若手の会の報告の調査をもとに情報科学若手の会が始まったモチベーションや各時代のホットなトピックなど50年を振り返ることを目標に、雑多な話をします。
一般発表 3: 「JavaScriptの世界へようこそ」 株式会社メルカリ 廣戸 裕大
JavaScriptは今やどこにでも使われる言語になっています。ES2015が出てからすでに二年。今回は、JavaScriptの言語仕様がどのように管理されているか、また今後どのようになっていくかについてお話します。JavaScriptを普段書かない人でも今のJavaScript界隈がどのように進んでいるかを説明できればと思います。
ショート発表 7: 「Nixについて」
Nixという純粋関数型言語とそれをベースにしたパッケージマネージャ・OS・DevOpsツーリングを紹介します。
ショート発表 8: 「ICTトラブルシューティングコンテストについて」 電気通信大学 情報理工学部 (3年) 田中 京介
ICTトラブルシューティングコンテストの運営委員の勧め、やってきたこと、そして今後の展望
ショート発表 9: 「第8回ICTトラブルシューティングコンテストの紹介」 電気通信大学情報通信工学部3年 川原 大輝
8/26, 27に電気通信大学にて開催された第8回ICTトラブルシューティングコンテストの紹介です。運営学生が用意したインフラで意図的に起こしたトラブルを全国から参加してくる学生が解決し、高得点を取ったチームが優勝する競技になっています。 参加者にもトラブルを解決してもらいますが、運営学生は準備期間中はもちろんの事、競技時間中も様々なトラブルを解決しながらなんとか開催をしています。そんな一端を発表したいと思います。
10月9日
一般発表 4: 「地政学リスクを算出する」 京都大学工学部7回生 日置レオナ
地政学リスクを数値化する方法および、それを使用した現行サービスジオマーリンについて。2016年から米国FRBを中心に地政学リスクを数値化する動きが多くみられ、データサイエンスからの地政学が始まっており、これから発展していくと思われる。この数値化をより精密にしていく3通りのアプローチを発表し、このコンセプトに基づいたサービスであるジオマーリンによって実用例を示したい。
一般発表 5: 「秒間たった5アクセスを捌く技術」 DeployGate Inc. 井上 恭輔
みなさんのサービスには1秒間にどれだけのアクセスがありますか?計算機が十分に高速で、クラウドサービスの利用により分散化が容易になった現代においては、Webやアプリからの大量のアクセスを捌くことは難しい問題ではなくなりました。しかし、もし処理対象がデジタルなパケットではなく、物理的な「モノ」であった場合はどうでしょう?私達の生きる物理世界に存在する重力や質量、遥かに高いエラーレートへの対応は、実は想像を超えて大変です。 本発表では幕張メッセで実際に開催された大規模イベントを、様々な技術を使いながら支えた実体験談をご紹介します。
ナイトセッション
ナイトセッションでは、発表時間5分のLT発表を行い、10件の発表がありました。 このほかにも多くの飛び込み発表があり、ナイトセッションも大変盛況となりました。
SNSでの反応
ブログ
tateishi_18さん: 2017年度版 今年も情報科学若手の会に参加してまいりました
mt_caretさん: 情報科学若手の会2017に参加しました。 #wakate2017
whywaitaさん: 第50回 情報科学若手の会に参加して発表してきました #wakate2017
hiroppyさん: JavaScriptの現状と将来というタイトルで発表してきた
decobisuさん: 第50回情報科学若手の会いってきた #wakate2017
どくぴーさん: 第50回 情報科学若手の会に参加してきた #wakate2017
おわりに
参加者全員がいろいろなトピックに触れることができるとともに、異分野の研究者ならではの同分野と異なる視点での議論や新たな可能性についての討論など研究者の視野・研究者同士のつながりを広げることができ、有意義な会合となりました。
来年度も情報科学若手の会を開催する予定です。下記のWebページにて随時情報を更新しております。 多くの方のご参加をお待ちしております。
謝辞
招待講演を快く引き受けてくださいました株式会社日本経済新聞社 吉村 大希様、スポンサーとしてご援助いただきましたさくらインターネット株式会社様、グーグル合同会社様、freee 株式会社様、株式会社オルトプラス様、この若手の会開催にあたり様々な面からご支援くださいました電気通信大学 岩崎先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。
幹事
- 小谷大祐 (京都大学)
- 岩成達哉 (株式会社リクルートホールディングス, Indeed Tokyo)
- 大島孝子 (Mercari, Inc.)
- 黒崎優太 (株式会社サイバーエージェント)
- 佐々木康汰 (さくらインターネット株式会社)
- 高橋真奈茄 (九州工業大学)
- 柳川優子 (お茶の水女子大学)
- 泉将之(東京大学)