はじめに
2008年9月20日から9月22日にかけて第41回情報科学若手の会を開催いたしました。会場は昨年度と同じ東富士リサーチハウス(静岡県駿東郡小山町)で行いました。全国より26名(招待講演者を除く)が参加し、様々なジャンルの発表を行い活発な議論を行いました。
発表および議論
以下のような発表枠を用意し、議論を行いました。各発表は質疑応答を含め1時間強で行いました。
9月20日
合コンで使える軌道解析 松村陽一(NEC 航空宇宙システム)
人工衛星の軌道設計、軌道制御・姿勢制御および追跡管制のアルゴリズムについて、例を用いた解説と共に、衛星のソフトウェア開発について発表していただきました。
情報科学のたのしみ 笹尾卓宏((有) ピーストレイン)
高校の教科「情報」が始まって5年になり、情報教育そのものは一般化している。しかし、その面白さ、楽しさを伝える事は難しく、発表者自身の経験を踏まえ「情報科学のたのしみ」の伝え方について発表していただきました。「ハッカーのたのしみ」を知っている我々が、「情報科学のたのしみ」をいかにして若い世代に向けて発信していくかについて議論が交わされました。
9月21日
囲碁専用ハードウェアの設計の検討 三好健文(東京大学大学院)
強い(速い)コンピュータ囲碁プレーヤを実現するための囲碁シミュレーション専用ハードウェアの設計について、囲碁シミュレーションの並列性についての話と共に発表していただきました。専用ハードウェアを作成する事の有効性について議論を行いました。
仮想マシンモニタと私 高橋一志(東京大学大学院)
仮想的な計算機(VM)を構築するためのミドルウェアシステムである仮想マシンモニタ(VMM)の現状についての紹介と、発表者が開発してきたWebブラウザ上からVMMを操作可能なシステム、VoXYについて発表していただきました。
招待講演
本年度の招待講演はサイボウズ・ラボ株式会社の竹迫良範様にお願いしました。竹迫様には「プログラマーの行動経済学」という題でご講演いただき、Perlらしいライフスタイル設計と実装についてご自身の経験を含めて話していただきました。IT産業における研究テーマ、プログラミング言語の選択がプログラマの将来をどのように左右するかについて経済学と絡めたお話をしていただきました。
Scala を登る 水島宏太(筑波大学大学院)
オブジェクト指向言語と関数型言語の特徴を融合させた言語であるScalaについて、言語仕様に関する具体的なソースコード例を用いた機能説明、また、現在のScala処理系が抱える問題点なども含めて紹介していただきました。
その他
その他、夜のセッション(宴会)以外にも以下に述べるデモセッション、飛び込みセッションを行いました。
デモセッション
例年通り日頃の研究や趣味などで開発しているソフトウェアのデモを披露するセッションを設けました。
サイボウズ・ラボ株式会社の西尾さんによる最中限の紹介、慶應義塾大学の鈴木による無線センサーネットワークデバイスSunSPOTについてデモを行いました。
飛び込みセッション
例年どおり、飛び込みで発表したい人を募り飛び込みセッションを行いました。 大日向さんによる流体ソルバの作り方、東京理科大学の東さんによるプログラム変換器生成系の作成、サイボウズ・ラボ株式会社の西尾さんによるフラクタル図形、千葉大学の上野さん、東京大学の川島さんによる発表、東京大学の三好さんによるBrainF**k/VHDL、筑波大学の斎藤さんによるRubyの数値演算拡張ライブラリDecimalの作成、招待講演者であるサイボウズ・ラボ株式会社の竹迫様による飛び込み発表を行いました。
おわりに
参加者全員がいろいろなトピックに触れることができるとともに、異分野の研究者ならではの同分野と異なる視点での議論や新たな可能性についての討論など研究者の視野・研究者同士のつながりを広げることができ、有意義な会合となりました。
来年度も同時期に情報科学若手の会を開催する予定です。多くの方のご参加をお待ちしております。開催日、開催場所は現在検討中ですが、以下のウェブページで随時情報を更新していきます。
謝辞
招待講演を行ってくださいましたサイボウズラボ株式会社の竹迫良範様、多額のご援助を頂きました財団法人慶応工学会様、この若手の会開催にあたりご支援いただきました電気通信大学の多田先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。