第51回 情報科学若手の会 開催報告

はじめに

2018年10月6日から10月8日にかけて、加藤山崎教育基金 軽井沢研修所(長野県北佐久郡)で、第51回情報科学若手の会を開催いたしました。全国より招待講演者を含む41名が参加し、様々な分野の発表を行い、 活発に議論しました。

51th

発表および議論

以下のような発表枠を用意し、議論を行いました。 本年は、通常発表6件、ショート発表8件の発表がありました。

  • 招待講演: 60分 (質疑含む)
  • 一般発表: 発表30分+質疑10分
  • ショート発表: 発表15分+質疑10分

発表一覧 (敬称略)

招待講演: 「そうだコンテナー データセンターを作ろう」 日本マイクロソフト株式会社 宇田周平

「クラウド時代のエンジニアに、オンプレミスのインフラ環境なんて必要ない!」、そう思っていた時期 が私にもありました。でも、今は違います。コンテナー (物理) にはクラウドでは絶対に得られない貴重な経験と、先人たちが築き上げた多くのノウハウが詰まっています。パッション (+ 時間とお金) があればコンテナー データセンターは個人でも作れる時代です。私が実際に建設した経験と未公開写真をもとに、その魅力をお伝えします。

若手特別講演: 「The Art of De-obfuscation」 日本電信電話株式会社NTTセキュアプラットフォーム研究所 黒米祐馬

リバースエンジニアリングは骨が折れる作業です。とりわけ、プログラムコードに難読化 (obfuscation) が施されていた場合には。本講演では、難読化の原理、難読化コードの読み解き方、そしてSMTソルバを核とした形式手法によって難読化コードのリバースエンジニアリングを効率化する試みを紹介します。

スポンサー発表 1: 「Webサービスへの要求の変化と技術選定」 freee株式会社 中島 啓貴

私は2017年にfreee株式会社に新卒エンジニアとして入社し会計フリーの開発に携わっている。一年半は短い期間ではあるが、組織としては急激に拡大した期間であり、プロダクトに対するニーズは大きく変化し、それに伴い多くの新たな技術がプロダクトに導入されてきた。当発表では、現在までに会計フリーに実際に導入されてきた技術を取り上げ、導入の経緯と効果を明らかにし、Webサービスに対する技術選定においてどのような視点を持つべきかを考察する。

スポンサー発表 2: 「コンパイラ技術で描く次世代ハードウェア開発の姿」 株式会社フィックスターズ 丸岡 晃

ムーアの法則の終焉に伴い、半導体の集積率向上による性能及び電力効率の向上はもはや停滞しつつあります。システムがより複雑化していく一方で高度な電力効率と応答性の要求を達成するためには、プログラマビリティを担保しつつ特定のアプリケーションに特化したドメイン固有アーキテクチャを開発・使用出来るようなプログラミング言語及びコンパイラ技術が不可欠となるでしょう。 本発表では画像処理用ドメイン固有言語である「Halide」と高度なコンパイラ技術を使って、次世代の専用ハードウェア開発にあるべき姿を描きます。

スポンサー発表 3: 「Preferred Networks ってどんな会社?&ディープラーニングで変わる世界」 株式会社Preferred Networks 今城 健太郎

前半「Preferred Networksはどのような経営方針で成長しているのかについて自分目線で紹介します。」 後半「ディープラーニングの優位性を伝えつつ、機械学習を使った製品が今後どのような設計になると思っているのかを紹介します。」

通常発表 1: 「生物に学ぶ深層学習 -第3次人工知能ブームの今とこれから-」 産業技術総合研究所 人工知能研究センター (RA) 鈴木 藍雅

2018年現在、人工知能(AI)という言葉が半ばバズワードとして情報の世界にとどまらず、様々な分野でもてはやされています。この第3次人工知能ブームは、2005年のHintonらによるディープニューラルネットワークの成功、そして2012年のKrizhevsky, LeCunらによる畳み込みニューラルネットの画像認識における応用を皮切りにした深層学習(ディープラーニング)技術の賜物とも言えます。 この人工知能ブームに乗っかって、そしてRed-oceanの中で揉まれている、一院生が(生意気にも)この「終わりつつある」人工知能ブームの総括と周辺技術の未来についてお話をしたいと思います。

通常発表 2: 「オープンハウスにおける機械学習・データサイエンスの取り組みについて」 株式会社オープンハウス 中川 帝人

オープンハウスにおける機械学習・データサイエンス、人工知能の取り組みについて説明します。不動産業界における機械学習における課題やデータ活用や整備状況についても説明します。

通常発表 3: 「Futureとその周辺サーベイ」 Idein株式会社 κeen

並行デザインパターンのFutureやasync/await、発展してコルーチンなどの様々な非同期を扱うプログラミング言語の機能をサーベイします。

ショート発表 1: 「Basic SecCap の紹介と京都大学提供「情報セキュリティ演習」の設計と実装」 京都大学学術情報メディアセ ンター (助教) 小谷 大祐

全国の14の大学が連携して運営している学部生向けの情報セキュリティ人材育成プログラム enPiT-Security (Basic SecCap) の紹介と、連携校の1つである京都大学工学部情報学科計算機科学コースが Basic SecCap に提供しているPBL演習科目「情報セキュリティ演習」について、学部生かつ他学からの学生の受け入れを前提とした演習内容および BYOD を前提とし IaaS を活用した演習環境の設計と実装について発表します。

ショート発表 2: 「segment routingの利用例と未来」 東北学院大学工学部情報基盤工学科2年 早坂彪流

segment routingと呼ばれる次世代のルーティングパラダイムがある。比較的新しく認知度の低いものであるが数年後の未来に利用されるのを目指すというinterop tokyoでのデモが行われ、かなりポテンシャルのあるパラダイムの一つである。これらの紹介を簡単におこなう。

ショート発表 3: 「自動販売機に炭酸飲料を導入してくれない学校で炭酸を飲むシステムを開発した話」 八王子桑志高校シ ステム情報分野3年 高田 勝悟

私の通っている高校の自動販売機には炭酸飲料がなかったのでクラス内で炭酸飲料を売買できるようなシステムを開発しました。そこでPyhonのフレームワークのDjangoを使ったアプリを作り商品や金銭を管理したのでそれについて話します。

ショート発表 4: 「量子コンピュータ どう動くか・どう動かすか」 (氏名非公開希望)

量子コンピュータの動作原理やプログラミング方法を解説します。特に量子ゲート方式と呼ばれている方式の量子コンピュータに絞り、どのような実装技術が量子コンピュータの実現に用いられているか、量子コンピュータのアーキテクチャ、量子プログラミング言語の話をします。

ショート発表 5: 「冬の陣2018から何か進展あったんですか?(Itamae)」 株式会社バンク うなすけ

情報科学若手の会冬の陣2018 で発表した、Infra as Codeツールである ItamaeのCIを直す発表 https://github.com/unasuke/wakate2018w_talk が、現在はどういう状況にあるのかということについて発表します。

ショート発表 6: 「CTFと現実世界」 東京農工大学工学府情報工学専攻2年 市川 遼

CTF (Capture The Flag) とはセキュリティの技術を競い合うコンテストのことです。あくまでも競技として考えられているCTFですが、一方で現実のコンピュータセキュリティの問題に関わってくることも少なくありません。また、CTFを開催する企業やカンファレンスは例年増えてきており、CTFを開催することによって得られるメリットがあるのも確かです。本発表では、そういったCTFの持つ副作用に焦点を当て、現実世界に対してどのように貢献しうるのか、近年のCTFの例と共に紹介します。

ショート発表 7: 「FirebaseとArduinoで忘れ物をなくす」 東京都立八王子桑志高等学校産業科システム情報分野3年 久下 柾

高校の課題研究で研究していることについてお話します。研究のグループの中で、忘れ物が多い人がいて、その人の発案で始まった課題研究。少ない研究費用の中でどれだけ高性能なものに作れるか挑戦中です。Arduino UNO、ESP8266モジュール、Firebaseを使って実装しました。高校の先生からプリント基板加工機をお借りして、PCBにもチャレンジしました。 高校3年間で培った知識の集大成です。

ショート発表 8: 「サイバー攻撃の脅威度の分析と可視化」 金沢工業大学工学部3年 竹村太一

 NICTが主催しているSecHack365(https://sechack365.nict.go.jp/)というイベントにおいて、Webサーバへの攻撃の脅威度の可視化をするソフトをチームで開発しました(https://github.com/zeroalphat/LogVisualization)。  既存のソフトでは、専門的な知識を持つユーザを対象にされているため、専門知識を持たないユーザはわかりにくく、内容が伝わりにくいのではないかと考えました。そのため、攻撃の脅威度とモンスターを関連付けて表示することにより専門的な知識を持たないユーザにもわかりやすく可視化するソフトを作成しました。成果物について、発表をしたいと思います。

ナイトセッション

ナイトセッションでは、発表時間5分のLT発表を行い、10件の発表がありました。 このほかにも多くの飛び込み発表があり、ナイトセッションも大変盛況となりました。

SNSでの反応

Twitter

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ブログ

第51回 情報科学若手の会に参加しました | うなすけとあれこれ

情報科学若手の会 #51 に参加してきた | κeenのHappy Hacκing Blog

第51回情報科学若手の会に参加してきました - 気の赴くままに

第51回 情報科学若手の会に参加しました - haneuma.log

第51回情報科学若手の会に参加しました - hogashi.*

情報科学若手の会に参加しました/運営をしました/幹事とは #wakate2018 - くろの雑記帳

第51回情報科学若手の会に参加してきました - 雑記

第51回 情報科学若手の会 - 井山梃子歴史館

2018年度版 今年も情報科学若手の会に参加してまいりました - tateishi_18の日記、情報科学とモノづくりについて

情報科学若手の会に参加した - お腹.ヘッタ。

第51回情報科学若手の会を運営して参加してきた #wakate2018 - どくぴーの備忘録

「第51回 情報科学若手の会」に参加してきました。 - freee Developers Blog

おわりに

参加者全員がいろいろなトピックに触れることができるとともに、異分野の研究者ならではの同分野と異なる視点での議論や新たな可能性についての討論など研究者の視野・研究者同士のつながりを広げることができ、有意義な会合となりました。

来年度も情報科学若手の会を開催する予定です。下記のWebページにて随時情報を更新しております。 多くの方のご参加をお待ちしております。

情報科学若手の会 http://wakate.org

謝辞

招待講演を快く引き受けてくださいました日本マイクロソフト株式会社 宇田周平 様、若手特別講演を引き受けてくださいました日本電信電話株式会社NTTセキュアプラットフォーム研究所 黒米祐馬 様、スポンサーとしてご援助いただきましたfreee株式会社 様、さくらインターネット株式会社 様、株式会社フィックスターズ 様、株式会社Preferred Networks 様、株式会社サイバーエージェント 様、Idein株式会社 様、この若手の会開催にあたり様々な面からご支援くださいました明治大学 横山先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。

幹事

  • 黒崎優太 (株式会社サイバーエージェント)
  • 佐々木康汰 (さくらインターネット株式会社)
  • 高橋真奈茄 (ヤフー株式会社)
  • 武田 真之 (慶應義塾大学)
  • 田中 京介 (電気通信大学)
  • 柳川優子 (株式会社NTTコミュニケーションズ)
  • 和田 佳大 (株式会社サイバーエージェント)