はじめに
2013年9月14日から9月16日の予定で、山喜旅館 (静岡県伊東市) で、第46回情報科学若手の会を開催いたしました。全国より招待講演者と若手特別講演者を含む47名(大学生9名、大学院生14名、その他学生1名、社会人23名)が参加し、様々な分野の発表を行い、活発な議論が行われました。なお、会期中である15日昼の時点で、16日に台風18号が関東地方を通過する予報が発表されており、多くの公共交通機関が運転を見合わせてご参加の皆様がお帰りになれなくなることが予想されました。そこで、ご参加いただいた皆様が安全にお帰りになれるよう、当初の予定を変更し、会期中に予定していた全てのご発表を15日夕方までに終え、15日夕方までの短縮開催といたしました。
発表および議論
以下のような発表枠を用意し、議論を行いました。
- 招待講演:発表45分+質疑15分
- 若手特別講演:発表30分+質疑10分
- 通常発表:発表30分+質疑10分
9月14日
招待講演:「歌声合成技術VOCALOIDと新しい音楽」 ヤマハ株式会社 剣持秀紀
歌声合成技術VOCALOIDについて、過去の歌声合成技術も振り返りながら解説するとともに、それによって生み出された新しい音楽ムーブメントとその意義について、様々なデモを交えながらご講演いただきました。また、歌声合成技術やその関連技術の今後の展望についてもご講演いただきました。
通常発表1:「セキュリティに終わりはない(やばいよ!!Web 改ざん編)」 インターリンク株式会社 小林裕士
メディアでも多く取り上げられている、普段どおりネットサーフィンをしているだけでマルウエアに感染してしまうような Web 改ざんの傾向や、標的型攻撃など、現在のセキュリティ分野で話題になっているトピックの紹介や、セキュリティ対策についてご紹介いただきました。
9月15日
若手特別講演:「プログラミング教育について」 東京大学工学部電子情報工学科 伏見遼平
HTML5ゲームエンジン「enchant.js」の開発チームリーダーである発表者に、enchant.jsをプログラミング教育に利用する試みを紹介していただき、その経験を踏まえた上で「プログラミングは文理や学歴問わず、みんなが学ぶべき価値のあるものなのか?」という問いについてご講演いただきました.
通常発表2:「レジスタスピルを最小化する大域的コード移動法の紹介」 東京理科大学理工学部数学科 那須孝志様
レジスタに限りがあることで変数をレジスタに格納しきれず、メインメモリに置かなければならない状態のことをレジスタスピルと言いますが、これを解消する手法を研究している発表者に、わかりやすい例を用いて現在検討している手法を紹介していただきました。
通常発表3:「コード最適化を利用したプログラミング支援システムの提案」 東京理科大学理工学研究科情報科学専攻 澄川靖信
コード最適化の研究をしている発表者が、最適化したコードの書き方をプログラマにフィードバックするシステムを提案し、その手法について参加者に意見を募ることで議論が行われました。
通常発表4:「ブログを月間100万PVに育てた経験とブロガーを取り巻く環境について」 東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻 長尾洋也
発表者ご自身の個人ブログを開設15カ月で月間100万PVにするまでに得た経験と絡めながら、近年ブロガーがどんなことを考え、何と戦っているのかを細かいトピックに分けて解説していただきました。
通常発表5:「組み込みやろうぜ!ソフトウェア屋さん向けの電子工作講座」 北海道大学大学院情報科学研究科 辻順平
情報科学若手の会に多く集まるようなソフトウェアを専門とする方々でも取り組めるハードウェアの入門方法について、ご自身の取り組まれている組み込みシステム教材を例に、デモを交えながらご講演いただきました。
通常発表6:
非公開を希望されるご発表がございました。
通常発表7:「回路技術とプロセッサとOS」 東京農工大学電子情報工学専攻 坂本龍一
回路技術、プロセッサ、OSが協調して動作する計算機システムのような複数の分野をまたいだ研究の楽しさと、意義について、講演者ご自身が取り組まれているプロセッサのハードウェアレベルの省電力化技術、そのハードウェアを使いやすくするためのライブラリ等の研究の内容も含めつつご講演いただきました。
通常発表8:「競技プログラミングと大学での研究とGoogleでの仕事」 グーグル株式会社 今城健太郎
講演者ご自身の取り組まれていた競技プログラミングが、大学での研究とGoogleでの仕事にどのように活かせているか、また競技プログラミングと大学での研究が、Googleでの仕事にどのように活かせているか、についてご講演いただきました。
通常発表9:「今日からあなたも決済業者☆モバイル決済サービスを自作しよう!」 株式会社ミクシィ 井上恭輔
ご講演者が趣味で作成された、誰でも簡単にSquareのようなモバイル決済ソリューションを自作する事ができる「OpenSwipe」というサービスとハードウェアについて、その使い方や実装の裏側、オリジナルガジェットを大量生産するノウハウや方法などをご紹介いただきました。
SNSでの反応
情報科学若手の会の様子を知っていただく為に、ご参加いただいた方のTwitterやブログ、写真などを幹事で把握している範囲でご紹介いたします。
第46回情報科学若手の会2013 ツイートまとめ #wakate2013 (まとめていただいたyumu19さん、ありがとうございます)
ブログ
yumu19さん 第46回情報科学若手の会に参加しました #wakate2013
Ueta Shunya さん 第46回情報科学若手の会に参加してきた #wakate2013
tsujimotterさん 情報科学若手の会2013( #wakate2013 )に今年も参加してきた
decobisuさん 情報科学若手の会にいってきた #wakate2013
写真
おわりに
参加者全員がいろいろなトピックに触れることができるとともに、異分野の研究者ならではの同分野と異なる視点での議論や新たな可能性についての討論など研究者の視野・研究者同士のつながりを広げることができ、有意義な会合となりました。
来年度も同時期に情報科学若手の会を開催する予定です。多くの方のご参加をお待ちしております。
謝辞
招待講演を行って下さいましたヤマハ株式会社 剣持秀紀様、また若手特別講演を行って下さいました伏見遼平様、スポンサーとしてご援助いただきましたさくらインターネット株式会社様、株式会社ミクシィ・イノベーションセンター様、グーグル株式会社様、更に、この若手の会開催にあたりご支援いただきました電気通信大学の岩崎先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。
浅野 智之 (ユーシーテクノロジ株式会社) 曾川 景介 (WebPay株式会社) 橋本 竜也 (大阪大学) 山下 美穂 (チームラボ株式会社) 小谷 大祐 (京都大学) 大島 孝子 (株式会社サイバーエージェント) 岩成 達哉 (東京大学)