第49回 情報科学若手の会 開催報告

はじめに

2016年9月17日から9月19日の2泊3日の日程で山喜旅館 (静岡県伊東市) にて第49回情報科学若手の会を開催いたしました。 全国より招待講演者と若手特別講演者を含む46名が参加し、様々な分野の発表を行い、活発な議論が行われました。

発表および議論

以下のような発表枠を用意し、議論を行いました。 本年は、通常発表6件、ショート発表11件の発表がありました。

  • 招待講演:発表45分+質疑15分
  • 若手特別講演:発表30分+質疑10分
  • 一般発表:発表30分+質疑10分
  • ショート発表: 発表15分+質疑10分

9月17日

ショート発表 1: 「正しく育てるニューラルネット - 転移学習という考え方」電気通信大学情報理工学部(4年) 鈴木 藍雅

データから知識を学習し、それを実問題へ適用する機械学習(machine learning)技術は、近年のDeep learningのような、表現力の高いモデルの登場によって一躍、注目を浴びています。しかしその一方で、そうした表現力の高いモデルは、多量の学習データを必要とする側面があり、用意できるデータの少ない場面においては、その恩恵を受けるのが困難という問題があります。 そこで、そうした問題を解決するためのテクニックとして、転移学習(transfer learning)という手法を紹介します。転移学習とは、宝石の鑑定士が「幼少の頃、普通に日常の風景を眺めたのち、大人になってからルーペを取る」ように、予め関係のないデータで学習した知識を出発点にした学習を行う枠組みを言います。 本発表では、コンピュータビジョンの分野で広く用いられる、畳み込みニューラルネットワークによる識別問題を例に、転移学習による知識獲得・識別性能の変化について考察し、実際に転移学習を応用する方法について解説します。

ショート発表 2: 「ざっくり学ぶ情報推薦」電気通信大学情報理工学部(4年) 名渡山 夏子

amazonや楽天のECサイト,ニコニコやNetflixの動画配信サービスなど,インターネットには多くの商品やコンテンツが溢れている.増えていくコンテンツに対して,我々ユーザのお金・時間は有限のため,ユーザに適切な情報を推薦する技術が重要になっている.普段からありとあらゆるWebサービス上で情報推薦の恩恵を受けているが,情報推薦は - どのようなアプローチを使っているのか - どういう問題点があるのか - これからどんな研究が増えていくのか などを発表する.

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ショート発表 3: 「Java8時代の文字列整形」LINE株式会社 井出 真広

String.formatはJava1.5から文字列を整形して出力するメソッドとして導入されました.String.formatは便利なメソッドの1つですが,実行時にフォーマットを解析しながら文字列を構築するため,その実行は効率的であるとは言えません.そのためJava言語で文字列を構築する場合にはString.formatの使用を避け,Hand optimizeされた文字整形を書くことも少なくありません.

本発表ではJava言語における文字列整形について概観し,またString.formatを10倍高速化するAnnotation Processor auto-string-formatについて紹介します.

ショート発表 4: 「HCI の世界」東京大学工学部(4年) 有薗 拓也

情報科学の中でも比較的新しく認知度の低い HCI という研究分野について、研究を始めたばかりのB4の目線から簡単な紹介を行う。

ショート発表 5: 「D3を用いて21世紀の世界を可視化」お茶の水女子大学理学部(3年) 馬目 華奈

近年,移民問題やテロなどにより,人々の関心は世界に向けられるようになりました.しかし,インターネットには情報が溢れており,サーチエンジンでは世界の状況がわかりやすく手に入りません.そこで本サイトでは,JavaScriptライブラリD3を用いて世界の状況を可視化させます.地球儀上にニュースをプロットし,アニメーション,画像や動画を用いて解説を行います.またニュース同士のつながりや背景も可視化され,既存のテキストメインのニュースサイトでは得られなかった情報を手にすることができます.今,世界中で起こっている出来事がこのサイトに来れば一目でわかる,そんなWebサイトを言語処理技術,可視化技術を用いて開発しました.今回は,可視化を中心に発表させていただきます.

ショート発表 6: 「技術のその先の人たちに」freee 株式会社 森口 友也

学生時代の僕は、技術で周りの人や世界をより良く出来ることに疑いはありませんでした。今でもそうです。 ただ僕自身スーパーエンジニアだと自負できるほどの卓越したスキルは持ち合わせておらず、社会に出るまでは不安な日々を送ってました。 ただひとつ、技術を使ってその先の人の幸せを考えてるうちに、研究生活から社会人4年ちょっとの間に iOS/Android にサーバーサイドやフロントエンド開発、インタフェースデザインへの従事、果ては営業までやってました。 そんな自分の経験と思いと、今こうして freee のエンジニアでいることの考えを皆さまにお話します。

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ショート発表 7: 「エンジニアが採用できない会社と会社に評価されないエンジニア(仮)」さくらインターネット(株) 伊勢 幸一

ここ数年、IT業界ではエンジニア不足問題が蔓延し、各企業は優秀なエンジニアの確保に四苦八苦しているが中々思うように採用できていない。しかし企業内の優秀なエンジニアが必ずしも正当な評価を受けられているという訳でもない。人材不足にも関わらず低評価されているという矛盾がなぜ発生しているのかを解説し、そしてこのネジレを打開する事はできるのかについて議論したい。(少々宣伝も入りますw)

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9月18日

一般発表 1: 「さくらもIoTはじめました」さくらインターネット株式会社 川畑 裕行 他

世の中にはたくさんのIoT Platformが存在します。 IoTは読んで字のごとくInternet of Thingsでモノのインターネットと呼ばれていますが、モノをどうやってネットワークに繋ぎこみますか? そんなモノをネットワークに簡単に繋ぎ、インターネットからそのデータをやり取りできるものが、さくらのIoT Platformです。

我々の役目はモノづくりをしている方と、Webの人たちを繋ぐ橋渡し役です。 本セッションではIoT Platformについて実際のデモを交えてお話させて頂きます。

ショート発表 8: 「ロボットでサッカーをしてきた話」

ロボットでサッカーをする競技会 "RoboCup Soccer"についての発表です。 自分が高専本科時代から今に至るまでの7年間関わっているこの競技の魅力や、技術的に面白い所を紹介します。 あとは、現在立ち上げているOBチームの話や、実際に大会に参加したときの裏話などお話できればいいかなと思います。

ショート発表 9

非公開を希望される発表がありました。

一般発表 2: 「クラウド上のマイクロサービスアーキテクチャとマネジメント」Google 周 礼贊

クラウドの時代になり、Webサービスを初めとする大規模なソフトウェアもマイクロサービスアーキテクチャの採用が進むようになってきました。本発表ではマイクロサービスアーキテクチャの利点とデメリット、それを支えるコンテナ・クラスタ・ネットワーク技術、そしてマイクロサービスアーキテクチャをクラウド上にデプロイ・マネジメントする手法やフレームワークについて紹介します。

一般発表 3: 「富士通研究所におけるストレージシステムに関する取り組みの紹介」株式会社富士通研究所 コンピュータシステム研究所 大辻 弘貴

現在販売中のエンタープライズ向けストレージシステムをはじめ,富士通研究所が取り組んでいる将来のストレージシステムに向けた研究開発について,最新の研究発表を交えてご紹介します. また,ユーザ視点から「欲しい」と思うストレージシステムについて,ざっくばらんに議論できればと考えています.

招待講演: 「農業・生物学におけるビッグデータのインパクト」農業・食品産業技術総合研究機構 平藤 雅之

近年、「知的」とされた仕事ほどコンピュータに置き換えやすいことが実感されますが、農業ではロボット化・無人化が遅れています。これはコンピュータに置き換えにくい仕事が多いことと、未解明の生物学的現象が多いことにあると考えられます。IoT、FAB、ビッグデータによって、この問題が解決する可能性が出てきました。「働かざる者、食うべからず」と長らくいわれてきましたが、「働かなくても食える時代」についても展望したいと思います。

若手特別講演: 「Phenox:手のひらサイズの自律飛行ロボットと研究開発プラットフォーム」東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 此村 領

Phenoxは、自身の電子回路のみで必要な情報を処理する「オンボード処理型」の手のひらサイズの飛行ロボットです。限られたペイロードでGPSの無い屋内環境下で自律飛行を行うための工夫や、飛行ロボット自身に搭載されたLinux上で開発できるアプリケーションなどについて、実機でのデモを交えながら紹介します。

ショート発表 10: 「社会人を支えるMicroservices」

プログラミングがある程度出来るようになると、自分がやりたいことを自動化したり、自分にとって有益なプログラムを作って、日々の生活を楽をにしたいと思う方が多いと思います。ですが実際に作る段階になると、運用やメンテナンスなどが問題になり、思ったほど楽にならないことが多いです。

そこで実際に自分自身の為だけの非公開のバックエンドサービスを作り、2年間ほど運用してみた経験から、作ったものの紹介や極力手間がかかりにくい作成・運用方法などを紹介します。

一般発表 4

非公開を希望される発表がありました。

ショート発表 11: 「『現金がきえた街』 〜決済・送金・与信の全て電子化され "現金" が消えた世界の物語〜」DeployGate Inc. 井上 恭輔

電子決済の先進国・アメリカでは、クレジットカード決済にとどまらず、企業間や個人間の送金、与信などの全て電子化され、オンライン上でリアルタイムに処理されています。 価値や信用が「現金」から「データ」に全て置き換わった世界で、どのようにサービスを開発し、どのようにビジネスを運用すべきなのか、日本における「少し先の未来」を開発者の視点からお話をします。

9月19日

一般発表 5

非公開を希望される発表がありました。

一般発表 6: 「株・為替を機械学習しよう!」Google Japan 今城 健太郎

株・為替を機械学習で予測するにあたり必要な基礎知識と,実験で得られた結果から実際に使える可能性のある手法をいくつか紹介します.

ナイトセッション

ナイトセッションでは、発表時間5分のLT発表を行い、12件の発表がありました。 このほかにも多くの飛び込み発表があり、ナイトセッションも大変盛況となりました。

SNSでの反応

Twitter

#wakate2016 - Twitter

エンジニアが採用できない会社と評価されないエンジニア

ブログ

てぃるとさん: 第49回 情報科学若手の会 に参加してきた - うごくものづくりのために

tateishi_18さん: 今年も情報科学若手の会に参加してきました - tateishi_18の日記、情報科学とモノづくりについて

らぷらぷさん: 第49回情報科学若手の会にスポンサー枠として講演してきました - 飼育小屋

Kさん: 情報科学若手の会 第49回に参加してみた

hnmx4さん: 第49回 情報科学若手の会を運営しました - haneuma.log

なっちゃんさん: 第49回 情報科学若手の会に参加して発表してきた.- なっちゃんのめもがき。

Unicore32さん: 情報科学若手の会 #wakate2016 に参加した - うにの貝焼き

どくぴーさん: #wakate2016 第49回情報科学若手の会に参加してきました - どくぴーの備忘録

丹羽直也さん: 第49回 情報科学若手の会に参加してきました。 #wakate2016 - Mine's Blog 見習い技術者のメモ帳

decobisuさん: 情報科学若手の会にいってきた #wakate2016 - decobisuの日記

黒崎さん: 情報科学若手の会に参加してきました #wakate2016 - AdTech Studio Tech Blog

puhitakuさん: 情報科学若手の会2016行ってきた - Zopfcode

おわりに

参加者全員がいろいろなトピックに触れることができるとともに、異分野の研究者ならではの同分野と異なる視点での議論や新たな可能性についての討論など研究者の視野・研究者同士のつながりを広げることができ、有意義な会合となりました。

来年度も情報科学若手の会を開催する予定です。下記のWebページにて随時情報を更新しております。 多くの方のご参加をお待ちしております。

情報科学若手の会 http://wakate.org

謝辞

招待講演を快く引き受けてくださいました農業・食品産業技術総合研究機構 平藤雅之様、若手特別講演を引き受けてくださいました東京大学 此村領様、スポンサーとしてご支援いただきましたさくらインターネット株式会社様、グーグル株式会社様、freee 株式会社様、株式会社オルトプラス様、この若手の会開催にあたり様々な面からご支援くださいました電気通信大学岩崎先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。

幹事

  • 小谷大祐(京都大学)
  • 泉将之(東京大学)
  • 岩成達哉(東京大学)
  • 大島孝子(Cyber Z USA, Inc.)
  • 黒崎優太(株式会社サイバーエージェント)
  • 佐々木康汰(さくらインターネット株式会社)
  • 高橋真奈茄 (九州工業大学)
  • 橋本竜也 (大阪大学)