第43回 情報科学若手の会 開催報告

はじめに

2010年9月11日から9月13日にかけて、芳泉閣 (静岡県熱海市西山町) で第43回情報科学若手の会を開催いたしました。全国より招待講演者を含む24名が参加し、様々な分野の発表を行い、活発な議論が行われました。

発表および議論

以下のような発表枠を用意し、議論を行いました。2件ずつの発表を1セッションとし、各発表は質疑応答を含め1時間強で行いました。今回はこの通常のセッションに加え、発表10分+質疑20分のショートセッションを設けました。

9月11日

記号意味論によるプログラミング言語比較学 竹迫良範 (サイボウズ・ラボ株式会社)

様々なプログラミング言語の仕様を提示しながら、それぞれの言語での記号の扱いをサンプルコードや実行例を含めて話していただきました。また、仕様の違いを利用する事で、RubyやPerlなど複数の言語で動くコードのデモを見せていただきました。

Web 上のデータをグラフとして統一的に扱うフレームワークの紹介 則のぞみ、山口清弘 (東京大学)

発表者らが開発中の、ウェブアプリケーションのデータをグラフとして統一的に管理し、グラフベースの種々のアルゴリズムを容易に適用できるフレームワークについて紹介していただきました。

9月12日

分散キーバリューストア okuyama の紹介 岩瀬高博 (株式会社 神戸デジタル・ラボ)

オープンソースソフトウェアとして発表者が開発中の、Java実装の分散キーバリューストア「okuyama」について発表していただきました。

未知の SQL インジェクション攻撃検知システム 八木達哉 (電気通信大学)

SQLインジェクション攻撃はGumblarを仕掛ける手段としても有効であるため、今でも問題となっています。今回は、開発中のデータベースのクエリログを用いてパターン学習を行い、未知のSQLインジェクションを検知できるシステムを紹介していただきました。

【招待講演】 Web のプライバシー: 技術と制度

本年度は産業技術総合研究所 情報セキュリティ研究センター ソフトウェアセキュリティ研究チーム 主任研究員の高木浩光様にお願いし、「Webのプライバシー: 技術と制度」という題で招待公演をしていただきました。Web のプライバシーについて何が問題とされてどう解決されているか、過去の経緯と現状を、技術面と制度面で日米の比較を交えながら日本が今後進むべき方向性についてお話をしていただきました。

クラウドをつかってみた 池内康樹 ((株)ACCESS)

クラウドの広まりにより、安く、簡単に安定したシステムの構築を可能したり、計算資源を使ったりする事ができるようになっています。いくつかの有名なクラウドサービスを取り上げて、現実的に、いくらで、どんなことができるのか、また、クラウドの問題点についても概説していただきました。

株式会社の歴史と姉ヶ崎寧々の未来 竹迫良範 (サイボウズ・ラボ株式会社)

戦後に制定された独禁法により持株会社の設立は禁止されていたが、1997年の法改正により純粋持株会社が解禁された理由は何だったのか。就職活動中のメタプログラミングが得意な情報科学系の学生と、恋愛の仮想化テクノロジーがもたらす新しい人類社会の未来について考察していただきました。

PEG パターンマッチングライブラリ PEGEX 水島宏太 (筑波大学大学院)

Parsing Expression Grammar(PEG)は、プログラミング言語などの曖昧性の無い文法を表現するのに適した、BNFとは異なる文法の表記法である。正規表現エンジンと同様の目的に使えることを目指して、PEGをベースに開発中の文字列パターンマッチングライブラリPEGEX (Parsing Expression Grammar EXtended by backreference) について紹介していただきました。

その他

その他、夜のセッション以外にも以下に述べるデモセッション、飛び込みセッションを行いました。

デモセッション

奈良先端科学技術大学院大学の松浦さんによるマップアプリと CO2 センサのデモ、サイボウズ・ラボの竹迫さんによる最新の HTML5 に関連するデモ、招待講演者である高木様による Winnyサイトブラウザ「Nyzilla」のデモの4件の発表を行っていただきました。

飛び込みセッション

例年どおり、飛び込みで発表したい人を募り飛び込みセッションを行いました。

Donuts の根岸さんによる Web フレームワーク「Nitrogen」、京都大学の曾川さんによる既存の逐次プログラムを並列化するツール、奈良先端科学技術大学院大学の林部さんによる述語項構造解析器 YuCha 「夕茶」の紹介や、京都大学の満永さんによるセキュリティの問題に関する発表があり、佐藤敏紀さんには自然言語処理における技術的な要点を事例と共に発表していただきました。また、奈良先端科学技術大学院大学の小町さんは「未踏ユースの失敗から学んだ事」と題してご自身の経験を元にプロジェクトを行う上で必要な事をお話していだたきました。同様に、東京大学の浅野さんは高専プログラミングコンテストでのご経験を発表していただきました。

おわりに

参加者全員がいろいろなトピックに触れることができるとともに、異分野の研究者ならではの同分野と異なる視点での議論や新たな可能性についての討論など研究者の視野・研究者同士のつながりを広げることができ、有意義な会合となりました。

来年度も同時期に情報科学若手の会を開催する予定です。多くの方のご参加をお待ちしております。開催日、開催場所は現在検討中ですが、以下のウェブページで随時情報を更新していきます。

情報科学若手の会 http://wakate.org/

謝辞

招待講演を行って下さいました産業技術総合研究所 情報セキュリティ研究センターの高木浩光氏、この若手の会開催にあたりご支援いただきました東京農工大学の並木先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。